岩手県と宮城県で生産される合板は、全国シェアの約3割を占めるとされる。
東日本大震災による津波で、これらの地域の工場が被災した結果、建設現場などで構造用合板の品薄感が高まっている。
半面、林野庁木材産業課の唐澤智課長補佐は「今後は値崩れも心配だ」と語る。
品薄といわれる製品の「高騰」ではなく「値崩れ」を懸念するのはなぜか。
林野庁では、被災していない国内工場でフル生産体制を敷けば、今後の合板需要に対応できるとみている。
2009年の全国の合板生産量が約229万m3であるのに対し、被災地以外の工場の生産能力は246万m3(日刊木材新聞調べ)だからだ。
応急仮設住宅の建設に必要な合板については、6万戸で約4万1000m3に過ぎないため、不足することはないという。
一方、工務店などでは実際に「合板がない」状況が発生している。
需給の逼迫を見越して複数社に発注したり、普段よりも多めに合板を確保したりする動きが、混乱を助長しているとみられる。
現場の声に対応するため、緊急輸入を検討している企業などもある。
唐澤課長補佐が懸念するのは、こうした動きで合板が余る事態だ。
「4月末から5月中旬にかけて大量の輸入製品が入ってきた際に品薄感が収まっていれば、値崩れを起こすかもしれない」。
今後も、合板の価格が安定しない時期が続く可能性がある。
長期的にみても、震災復興による需要増や、消費者の住宅購入意欲の減退による需要減など、不確定要素は多い。
しばらくは、動向を注視する必要がありそうだ
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かつて、合板の主要材料は南洋材やロシア産針葉樹といった輸入材だったため、工場は沿岸に分布している。
現在は国産材へのシフトが進み、4月からは初の「内陸型」である森の合板協同組合(岐阜県)の工場が稼働した。
同工場は、合板最大手のセイホクなどが設立。
被災した同社の石巻工場の従業員も受け入れた。(資料:林野庁)