東日本大震災による液状化現象は、千葉県浦安市のような臨海部に限らなかった。
埼玉県、茨城県、千葉県などの内陸部でも数多く発生し住宅地に被害を及ぼした。
下の写真は茨城県稲敷市の住宅。
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建物の不同沈下と、液状化現象に伴う噴砂の激しさで建物の1階の窓まで埋もれた状態だ。
この敷地は利根川に近い。
古地図や古文書などの資料を調べたところ、元は利根川から分かれた沼地だったところだ。
1959年に当時の建設省が埋め立てた「旧河道」であることが判明。
工事の際、利根川の川底の砂を利用したことが分かっている。
87年の千葉県東方沖地震の際も、この敷地周辺で液状化が確認された。
かつて川だった『旧河道』は液状化しやすく、一度液状化すると、再液状化する傾向があると言う。
また、河川沿いの敷地はもちろんだが、丘陵地でも液状化は起こっている。
仙台市青葉区は郊外の丘陵地にあるが、液状化現象を示す噴砂や、地盤の変状が散見された。
丘陵地というと、盛り土された住宅地での地滑りが想定されるが、谷地や池などを埋め立てた場所では液状化が発生している。
「均質で緩く高水位」が危険
液状化とは、地盤の一部が大きな地震の力を受けて液体のようになる現象。
緩い砂質土層があり、地下水位が高いなどの条件がそろえば、内陸部でも地震時に液状化は発生し得るのだ。
常時は、砂質土層は固体。
土粒子が接点でつながり、支持力を発揮している。
土粒子間には間隙があり、緩い(地盤の強度を示すN値が低い)砂質土層は間隙が大きい。
砂質土層が地下水位より深いところにあると、間隙には水が満たされていてこの水が問題となる。
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地震が発生し、せん断力が働いて地盤がせん断変形すると、間隙が小さくなる。
水は圧縮しないので水圧が高まり、それまでつながっていた土粒子が一時的に外れて、水の中に砂が浮いた状態になる。
砂質土は支持力を失う。
水は砂や粘土を巻き込み、地盤の弱い部分を通って地表に噴出する。
これが噴砂現象。
こうして水が排出されると、その分だけ間隙は小さくなり、地盤は沈下する。
水中を漂っていた土粒子は沈降し、再びつながって支持力を発揮する。
間隙の水が徐々に抜けて圧密沈下する粘性土地盤に対して、水はけがよい砂質土地盤は圧密沈下しないので、常時はあまり問題視されない。(砂質地盤はわりと地耐力が高いので安心してしまう。)
唯一の欠点が緩い砂地盤の地震時の液状化だってことを肝に銘じておくべきだ。
古地図の収集は、建築に関わる者必須だね!