黒文字はNHKサイトからの転載です。
謎のシックハウス症候群を追え！
専門家ゲスト：坂部貢さん（東海大学医学部 教授）
９０年代後半に社会問題となり、対策が進んできた「シックハウス症候群」。
住宅に使う塗料や接着剤などの化学物質により、頭痛や吐き気などの体調不良を起こすというもの。
もはや過去の話になったかに見えるこの問題が今再び、全国各地で大きなトラブルを引き起こしています。
厚生労働省が規制している化学物質が含まれていない塗料や接着剤を使っているのに、「シックハウス症候群」が続出。
新築の家やリフォームだけでなく、職場や学校、さらには家具などでも起きる「謎のシックハウス症候群」の原因と対策に迫りました。
シックハウス症候群とは？
広い意味では、ハウスダストなどアレルギーなども入るが、一般的には、建物の建材や、家具などから出る揮発性の化学物質が原因で起きる体の不調をシックハウス症候群と言います。
目・鼻・のどなどにある粘膜が、化学物質に刺激され、「せきや涙、鼻水」などがでます。
さらに粘膜への刺激で知覚神経が過敏になるため、体がかゆくなったり、じんましんが出たりする人もいます。
その影響は脳にも伝わり、自律神経などをコントロールしている部分に強く影響するので、頭痛・吐き気・不眠など、場合によっては、うつ症状を引き起こすこともあります。
※これは花粉症と同じで、誰もがいつかは発症するおそれのある病気です。
人体にはアレルギー物質を受け入れる許容量があって、その量は人それぞれです。それがあふれ出してしまった時が発症というメカニズムです。
＜シックハウス症候群の主な症状＞
・頭痛、吐き気、不眠、うつなど
・せき、鼻水、涙など
・かゆみ、じんましんなど
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続発する 謎のシックハウス症候群
９０年代後半に「シックハウス症候群」は大きな問題となり、国は、建材の接着剤や塗料、防虫剤などによく使われていた、ホルムアルデヒドなど１３種類の化学物質の規制値を決めた。
しかし、今、これらの化学物質が規制値以下なのにシックハウス症状を訴えるケースが続発。
今回は、岩手県奥州市の胆沢第一小学校のケース、
二段ベッドを購入した家族に起きた岡山のケース、
東京・永田町の参議院の議員会館のケース
がご紹介されました。
どれも、シックハウス規制値内の安全とされる建材や家具でした。
＜国が指針値を出している１３の化学物質＞
・ホルムアルデヒド
・トルエン
・パラジクロロベンゼン
・スチレン
・フェノブカルブ
・テトラデカン
・ダイアジノン
・アセトアルデヒド
・キシレン
・エチルベンゼン
・クロルピリホス（現在は使用禁止）
・フタル酸ジ－ｎ－ブチル
・フタル酸ジ－２－エチルヘキシル
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『シックハウス症候群』子どもと女性が危険
主婦など一日中同じ場所にいる方が多いためか、シックハウス症候群は女性に症状が出ることが多いと言われています。
また、子どもは成長段階にあるので、たくさん空気を体内に取り入れて過ごしているため、空気中の化学物質の影響を受けやすいと言われています。
環境省が行った調査によると、１日に吸う空気の量を体重１キロあたりで比較すると、子ども（小学校低学年まで）は、大人の２倍ほどになります。
※体の大きさも小さいので、アレルギー物質の許容量自体が少ないのかもしれません。
謎のシックハウス症候群の正体とは？
謎のシックハウス症候群の正体が最近、少しずつわかってきました。
今回、正体に迫った２つのケースをご紹介しました。
一つ目は、念願の新築マンションで起きたシックハウス症候群の原因を、みずから調べようと動いた、３人家族の夫のケース。
ここでは、規制されている一つ一つ化学物質は問題がありませんでしたが、ＴＶＯＣという、部屋の中を漂っている化学物質（揮発性有機化合物）の総量が、国の定める値、１立方メートルあたり４００マイクログラムを超えていました。
※ＴＶＯＣ＝Total ＶＯＣ
つまり規制の枠に入らないたくさんの謎の化学物質が、室内に充満していたことがわかった。
二つ目は、北海道立衛生研究所、主任研究員の小林智さんが、紋別市の小学校で起きたシックハウス症候群で、原因物質の一部と考えられる２種類の化学物質を明らかにしたケース。
２つの物質とは、
「１メチル２ピロリドン」
と
「テキサノール」
です。
実はこの２種類の物質、皮肉なことに、揮発性が少なく、健康への影響もないと、油性塗料に変わって、あえて使われていた水性塗料に含まれる化学物質だったのです。
※水性塗料だからといって安全じゃない！
いろんな原因物質が生まれた理由
１９９７年から２００２年頃までにかけて、国は１３物質の化学物質について、ガイドライン値を設定
しました。
その結果、建材メーカーは、そこで指定されている化学物質を使わずに、別の物質を使って接着剤や塗料などを開発しました。
さらに２００２年に建築基準法が改正され、ホルムアルデヒドが法的に規制されることに決まりました。
その結果、さまざまな代替の化学物質が使用されるようになり、シックハウスの原因物質が予想以上に多様化してしまいました。
接着剤などを作る建材メーカー側の対応が進んでいったことが、逆にあらたなシックハウスの原因物質を生んでしまったのです。
※シックハウスに対応した住宅建材といえども100％安全とは言い切っていけない！
「うちは絶対安全です！」という業者はアブナイ！
『カビが原因？』シックハウス 最新情報
シックハウスの原因物質として今、最先端の研究者が注目しているものが、カビです。
カビの胞子ではなく、カビが排出するガスが、シックハウス症候群の原因物質になっている可能性があるというのです。
こうした微生物由来の揮発性有機化合物のことを、「ＭＶＯＣ」と呼びます。
カビ臭いというニオイはカビが栄養を取り入れて生命活動をする中で排出される化学物質だと考えられています。
つまり古い家でもシックハウス症候群は起きる可能性があるのです。
対策はどうすればよいのか？～その１ ケミレスタウンプロジェクト
シックハウス症候群を予防できる建築物の研究を、産学一体で行っているのが「ケミレスタウンプロジェクト」です。
ケミレスタウンでは、千葉大学健康環境フィールド科学センターの敷地内に、戸建て住宅型の「ゲストハウス」や、ギャラリー、講義室、クリニックなどの入った「テーマ棟」を建設しています。
新築の建物の中で漂う化学物質の数は多く、しかも人によって、どの化学物質で反応するか、どの位の量で反応するかが違います。
そのため、建物の中を漂う、化学物質の総量を下げるのがいいと考え、研究を行っています。
※モデルハウスでは、栗の床板が使われていました。
天然の杉や桧といえども化学物質が放出されていることをキチンと説明している業界人少ないと思います。
多くの木材を分析した結果『栗』が一番化学物質を放出しないそうです。
＜ケミレスタウンプロジェクト＞
ホームページ：http://www.chemiless.org/contents/chemilesstown.html
ギャラリーの開館は、木曜日と金曜日の、午後１時から５時までです。入場料は無料です。
所在地：〒２７７－０８８２ 千葉県柏市柏の葉６－２－１
千葉大学環境健康フィールド科学センター内
アクセス：つくばエクスプレス 柏の葉キャンパス駅 下車徒歩５分
対策はどうすればよいのか？～その２ 換気
一般の人が、誰もができる効果的な防衛策は、「換気」です。
２００２年の建築基準法改正で義務付けられたのは、２時間に一回、家全体の空気を入れ替えることですが、具体的には下記のような方法が実践的です。
まず、窓をどの程度開けるべきか。以下の２つの方法があります。
【一日中、窓を数センチでよいから開けておく】
【１時間に１回、５分程度、窓を大きく開ける】
さらに、窓をあける際にやると効果的なのが、
【窓を開ける時、必ず廊下側のドアを開ける】ことです。
※単に窓を開けるのではなく、風通し良くしなければなりません。
現代の住宅は、高気密・高断熱になっているため、より換気は重要になってきます。
※自然素材を用いているから『健康住宅』ですと謳っているハウスビルダーがありますが、それは間違いなのです。
人によっては、イイ匂いとされる桧(ひのき)でもシックハウス症候群を発症するケースがあります。（極稀ですが…）
我が家は、視界に入る部位のほぼ全部に『杉』材を用いています。
５年になりますが、省エネの観点からＶＯＣの発散が多くなる夏場にはエアコンの使用を極力避けています。
猛暑の日中でも、窓を全開にして、階段から２階吹抜け上部に設けた有圧換気扇を回して、屋内に強制的な風の流れを起こして暮らしています。
ベニヤや接着剤も使わないわけにはいかないので使用していますが、今のところ誰も健康に問題がないのは、風通しの良い暮らしをしているせいかもしれません。
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