今回の巨大地震の産業界における衝撃は、自動車メーカー各社から、住宅資材・建材メーカーまで、多くの産業が多大な影響を受けている。
某建材会社の社長は、必要なときに必要なだけ入荷させる超効率生産方式のトヨタカンバン生産方式は、自動車業界に関わらず、機械メーカーや住宅業
界に浸透している。
納入価格を抑えるため、系列下請企業も当生産方式が貫かれている。
しかし、今回の巨大地震で被害を受けた関東や東北の部品工場からの出荷がストップ、地震等まったく関係ない世界の、九州の工場でも部品や部材が入
荷せず一挙に生産ストップに至っている。
在庫を持たないカンバン方式の限界が表面化していると同社長は述べる。
超効率生産により日本経済を引っ張ってきたこれらの企業群は、巨大震災により、その弱さを露呈している。
<住宅業界>
住宅業界でも合板や建築資材が手に入らず、建築を一部ストップしているハウジングメーカーもある。
災害地に生産工場を持つスミリンも打撃を受けているが、他の大手建築会社の多くも震災直後から、建築資材の調達に全国の建材問屋筋を駈けずり周り、必死となっている。
田舎の建築会社はそうした噂を聞き、動いたときには、建材屋さんに在庫がなかった。
天下のダイキン製品でさえ、物が入らないと嘆いている建材会社もある。
<合板の今後、輸出各国の状況>
合板は、ロシアがプーチン時代に、資源保護を名目に乱伐採を抑えさせ、輸出量を減少をさせてきていた。
中国は、自国の建築ラッシュで、これまで、国土の割には少ない森林を乱伐採してきた。
しかし、乱伐採の影響により豪雨などによる被害が顕著になり、乱伐採を禁止する政策が打ち出されている。
国の政策では、来年は原木の伐採量を半減させ、再来年は0にするという。
既に規制がかかっており、ベニアやフローリングなどの生産工場は、材料不足に陥り、閉鎖された事業所も多くなっているという現地報告もある。
こうしたことから、中国からのフローリング材やベニアなどの輸入は、今後大幅に減少するものと思われる。
日本の主な輸入先である東南アジア(マレーシアやインドネシアからの輸入が多い)では、これまでも乱伐採問題が取り上げられてきた。
その時々で価格も上がってきた。
しかし、今回はこれまでとは全く異にすると先述の社長は述べる。
現在、東南アジアは経済成長が著しく、国内需要も大きくなり価格も上昇、また原油高騰もあり、高いインフレ状態となっているという。
既に、輸入のベニアなど製材加工品や原木が高騰し続けていると述べている。
日本は、住宅着工件数の大幅な落ち込みからいまだ回復しておらず、合板類の生産工場や輸入商社は、販売価格を上げようにも上げられない状況がこれ
まで続いていた。
今回の巨大地震による合板類への影響は、東北三陸海岸の生産工場の壊滅的な被災状況による供給減、かたや震災復興のための仮設住宅用特需。
しかも、これまで長引く住宅産業の不況により、需給バランスが低次元で拮抗していたため、市場からいっぺんに合板類が消えた。
今後、被災していない生産工場の増産と輸入が拡大しようが、そうした原木や木材加工品(合板類、材木、フローリング等)の輸入価格は、住宅産業界
が今後とも不振に陥り続けようが、木材という資源を輸出する国がリードすることになり、これまでのような価格帯では納まらないと思われる。
パワービルダーも新建材や木材価格が上がれば、これまでのような価格帯での販売には限界が出てくるものと思われる。
まさか、どっかみたいに本体価格を抑え、オプション・外溝費用でボッタクルなどはなかろう。