地盤災害から家を守る②追記あり

2011/06/22 地盤災害から家を守る①
http://youyou88.hamazo.tv/e2679697.html


・・・の続き。


前回のおさらい

SS(スウェーデン式サウンディング試験)だけでは、液状化の危険は判定できない。

その証拠に、東日本大震災では千葉県浦安市などで地盤の表層改良や柱状改良を行った住宅でも、全壊に相当する不同沈下(傾き)した住宅が少なくなかった。

液状化の危険を判定するには、
①地盤の支持力を示すN値
②地下水位
③土質がわかるボーリング試験
・・・の三点から推定するもの。

多くのハウスメーカー、住宅会社、工務店が採用するSS試験は安価で行える。
そのうえ、正しい地盤調査結果が得られず、その場しのぎの地盤改良や柱状改良工事、小径鋼管杭工事等の安価な建物を支持する工事のみが行われてきた。

その結果、浦安の高級住宅街が軒並み液状化の被害を受けた。



それらは、一般の消費者が“建築主”として、初めにハウスメーカーや住宅会社、工務店といったいわゆる施工業者の門戸をたたいた結果だ。

浦安の高級住宅街だから、ほとんどが名のあるハウスメーカーや住宅会社・販売会社であろう。

中には、建築を教える大学教授の自邸(環境共生住宅)まで傾いてしまっている。(デザイン性能に重点をおいて基礎を疎かにしてしまったのだろうか?)

追記 この家は33/1000傾き、立つと一見して傾いていることがわかる。
   このあたりの液状化したのは深さ7m程度の層。
   深さ4m程度の表層改良や7m以下の柱状改良は全く効果がなかった。
   このあたりの基盤層は深さ45m。
   住宅を水平に戻すために鋼管杭を打つ工法があるが、深すぎて途中で座屈してしまう。
   だから最小限のジャッキUPと埋め戻しで水平化の工事をするという。
   次の地震が来る恐れもあるが、浦安の土地の特性とあきらめるそうだ。


施工業者に依頼をすれば、初めに受注(契約に持ち込む)ありきが当然だ!

設計事務所だってそうかもしれない。

事業をやっている以上、当たり前の行為だろう!


だけど、地盤の下を疎かにした報いが建築主のみに降りかかり、500万、1000万円の補修費用が新たにかかるなんて理不尽極まりない。
ハウスメーカーは30%も40%も利益&経費を搾取しておいて知らぬ存ぜぬか!



私は、建築の設計事務所をひとりで細々とやっている。

だから、少ない予算で良い住まいをつくろうとしているクライアン(建築主)にアコギなマネはしない。


まず手始めに、建築予定地の法的制限などを調べるとともに、『静岡県地震対策地質条件図』で凡その地盤を確認する。
地盤災害から家を守る②追記あり
静岡県地震対策地質条件図一部抜粋


あと、『液状化危険度図』
地盤災害から家を守る②追記あり
液状化危険度図一部抜粋


『人工改変地分布図』
地盤災害から家を守る②追記あり
人工改変地分布図一部抜粋

そのほか『***地表最大カ速度図』も確認する。

県下の設計者で、これらを持っている事務所はそう多くはないだろう。


静岡県地震対策地質条件図は、地表から5m程度までの地質の分布図だ。

液状化危険度図は、液状化を起こす危険度を表わした分布図。

人工改変地分布図は、埋め立て、盛り土、切り土など土地を人工的に改変した箇所を図示したもの。


私は、例えばこれを元に、土地を買い求めて住宅を建てたいと相談にやって来たクライアントに、それらを示して大まかな状況を説明します。

個々には、ボーリング調査を行わない限り自信を持って話せることではないけれど、周辺の状況からほぼ間違いないだろうという話しを。

もちろん、ちゃんと調査をした結果に基づいて表層改良を行ったり、柱状改良、深い小径鋼管杭などと地盤を補強して建物を支持させる方法はいか様にもあることまで説明します。

当然、それには相応の費用が掛かるということまで…

それに、その結果「100%大丈夫!」と自信を持って言えないことまで…

(それは正しかったようだ! 
 想定外というものがある。
 浦安市などの例がそれだ!
 どのハウスメーカー、住宅会社も
 100%大丈夫!と自信を持って売っていたんだろうね!)



私は、それでいつくもの依頼を棒に振っている。

もっと安心な土地が見つかるまで保留になるのだ。

だからといって、仕事上、子どもの学校、買い物の便などを考えてその地域で土地探ししているのに、それらを満たしつつ地盤の良い土地なんてそうそう見つかるはずがないのだ・・・

それを方便に、私の事務所に設計を依頼することを断っているのかもしれないけれど、私は100%は無理としてもある程度自信を持って設計できない仕事は請けられない。

いざ大地震が発生した時に、自分に法的責任が無くとも過去のクライアントが困る姿を見たくはないからだ。

だから、建築に関わる多くの業者は建築主の利益に反する負の資料を見せることはないだろうけど、私は惜しげもなく公開するようにしている。(ただ単に後ろめたい事をしたくないだけのこと。)



最後に、前出の『人工改変地分布図』というのは、土地の“地歴”を調べることになる。

現状は、閑静な住宅地だが、以前はどうだったのだろうか?と・・・

私が今住んでいるところは、20年前は山林だったところだ。

山林には、尾根があれば谷もあって、尾根を削って谷を埋めてひな壇状の住宅地が造られます。

私は、昭和51年(1976)測図の1/2500地形図を旧浜松市全域と、昭和41年測図の1/10,000地形図の旧浜松市のほぼ全域を持っております。

それと最新の1/2500地形図を重ね合わせ、国土地理院の古い航空写真とも比較をして、現住地が昔谷筋ではなく地山を削って平坦にした土地であることを確認して移り住んでおります。
もちろん静岡県地震対策地質条件図等も参考にしております。

そこまで確認したうえで、真下に断層が走り地盤が地割れ崩壊するようなことがあったら仕方ないと思うようにしております。


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