宅地の地盤災害(2)地盤改良したのに液状化で不同沈下

“わらべ”

2011年06月30日 12:02


不同沈下を防ぐ対策として、柱状改良や表層改良、鋼管杭などの地盤改良工事が施される。


柱状改良は、東日本大震災で液状化した地域で最も多く採用されていたが、不同沈下した住宅がたくさんあった。

柱状改良は主に軟弱地盤での不同沈下対策とされている。

土とセメント系固化材を混ぜて柱状の改良体をつくり、地盤との摩擦力で建物を支える方法だ。

硬い地盤で支持していないので、改良体より深い層が液状化すると改良体ごと沈んでしまうようだ。


浦安市では、深さ8.25mの比較的長い改良体を使ったが、8.25m以上深い層で液状化が発生していたようで1000分の6.6傾いた事例がある。

その一方で、同じ地区内の別の住宅は6mの改良体で不同沈下を免れてもいる。


液状化の危険がある地域で柱状改良を行う場合は、地盤のどの深さに液状化する層があるかを正確に調べることが重要ということだ。

液状化する層は、地盤の支持力を示すN値と地下水位、土質がわかるボーリング試験などで推定できる。

SS試験(スウェーデン式サウンディング試験)では駄目だ!ってことです。

少なくともN値10くらいの層が1m以上続くところに深く根入れなければならない。



表層改良で噴砂を抑制した例

千葉県香取市に、セメント系固化材で表層地盤を固める表層改良を深さ約1m分施工した分譲住宅地を建設した例。

周囲は液状化でひどく不同沈下したが、この分譲住宅地は不同沈下していなかった。

液状化は地下水位が高く、粒のそろった砂層があると発生する。

表層改良は砂の表層地盤を変質させるので、浅い層での液状化の発生を防ぐとともに、噴砂を抑え込む効果をいくらか期待できるそうだ。

液状化による不同沈下が多発した茨城県潮来市にも、不同沈下を免れた住宅がある。

その家は浸水に備えて山砂を敷地全体に1m盛土していた。表層改良と同じ効果があったと思われる。


他方、深さ約1m表層改良していたが、傾いた住宅もあった。


表層地盤自体がそれほど固く締まってなく、改良面積が基礎の周りだけだと、改良していない部分が液状化して、改良体ごと傾く恐れもあるそうだ。



硬い支持層に打ち込む鋼管杭を採用した住宅で思いがけない問題も見つかっている。



地盤が数十cm下がって地盤から杭の頭が飛び出たり、杭頭が若干傾いたりした。

地面から突出した杭は水平外力に弱いため、余震などで変形したと思われる。

こうした鋼管杭は空気に触れるとさびやすいから早急に埋める対策が必要になる。

また、地震で水平外力を受けることによる杭の変形は、液状化した地盤の中でも起こり得るから、鋼管杭も柱状改良も、地震の水平外力を計算して設計する必要がある。



水の逃げ道を確保して液状化の影響を軽減工法がある。

液状化する条件を取り除き、不同沈下を防ぐ地盤改良法だ。

その一つが、地下水を逃がす戸建て住宅用の「ハイスピード工法」。

「砕石パイル」と呼ぶコンクリート用の砕石を用いた改良体が特徴で、砕石は隙間に水が通りやすいため、土中の水圧上昇が抑えられる。これによって液状化の影響を抑制できるというのだ。

地盤を削孔し、採石を締め固めながら孔に詰めていって地盤そのものの支持力を上げる効果がある。

液状化対策をする場合は、基礎の下と建物の周囲に厚さ30cm以上の採石からなる透水層を敷き、砕石から上がってきた水を抜く雨水浸透マスなどを埋設する。

工事費は、建築面積約84㎡の住宅で、不同沈下だけ約80万円、液状化対策を兼ねる場合は約263万円とか。 



もう一つの「スーパージオ工法」は、「アーススーパージオ」(ESG)と呼ぶポリプロピレン製の改良体を使う。 

基礎の下と外周に幅広く敷く中空のESGが地震時に地下水を集め、周りの採石層から地表に排水して液状化の影響を抑制する。

貯水容量は1㎡当たり約450リットルあり、雨水貯留層を兼ねられる。

ESGは既存の土と置き換えて地盤を軽くするとともに、建物の荷重を地盤に分散させることで不同沈下を防ぐ。

工事費は土の処分費用などで異なるが、建築面積66㎡の基礎下全面に敷設した場合で約200万円とか。

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